薬局経営におけるDXとは?

令和6年度から新設「医療DX推進体制整備加算」とは?

近年、さまざまな業界でDX(Digital Transformation)が進められています。
例えば、銀行でのバンキングアプリ、飲食店でのモバイルオーダー、タクシー配車サービスなど。
私たちの日常生活を便利で豊かにしてくれるものばかりです。

医療業界でもDXは注目されています。
デジタル化の技術を活用することで、診療情報や薬剤情報を職種・施設間の垣根なく、正確に共有できるようになります。

参考サイト:厚生労働省 オンライン資格確認の次は電子処方箋! 〜いま、進めよう!
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001219786.pdf

かつて薬局では紙薬歴の管理でしたが、近年は電子薬歴が主流です。
電子薬歴では薬歴入力や検索の時間短縮、相互作用の自動チェック等ができ、以前と比較すると「効率的で効果的な医療を提供」できるようになりました。

これも1つの医療DXと言えます。

しかし、他の業界と比較すると、医療業界のDXは遅れているのが実情です。
日本政府は、超高齢社会、医療費の増大など、さまざまな問題を解決するため、早急に医療DXを推進したいと考えています。

具体的には、以下の5点の実現を目指しています。

  1. 国民の更なる健康増進
  2. 切れ目なく、より質の高い医療等の効率的な提供
  3. 医療機関等の業務効率化
  4. システム人材等の有効活用
  5. 医療情報の二次利用の環境整備

参考サイト:厚生労働省 医療DXについて

医療DXを推進するための取り組みとして、令和6年度の診療報酬改定にて「医療DX推進体制加算」が新設されました。

参考サイト:東和薬品株式会社 令和6年度診療報酬改定 【改定の概要】調剤 https://med.towayakuhin.co.jp/cms_assets/admininfo_rev_info/admininfo_rev_info-pdf-196.pdf

  • 今回の「医療DX推進体制整備加算」の導入目的は、以下の2つです。
  1. マイナ保険証による薬剤情報、診療情報等を活用可能な体制を整備するため
  2. 電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等のデジタルツールを導入し、質の高い医療を提供するため

マイナ保険証による薬剤情報、診療情報等を活用可能な体制整備

令和6年12月2日に、従来の健康保険証の新規発行が終了します。
そのため、薬局や病院にてマイナ保険証を利用した「オンライン資格確認」の導入が必須となります。
ハード面を整えるために「医療DX推進体制整備加算」が新設されました。

なお、「医療DX推進体制整備加算」の要件「(2)オンライン資格確認の導入」は、令和6年度の改訂前(2021年10月)からマイナ保険証の利用を促しています。
しかし普及は進んでおらず、令和6年1月時点でのマイナ保険証の利用率は全国平均4.6%にとどまっています。

参考サイト:厚生労働省 マイナ保険証の利用促進等について
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001217026.pdf

電子処方箋、電子カルテ情報共有サービス等のデジタルツールの導入

令和5年1月26日から電子処方箋の運用が開始となりました。
令和6年4月時点での薬局における導入率は全国3割程度と低水準でとどまっています。
病院やクリニックが電子処方箋を発行しても7割の薬局が受け取れない状況です。

「オンラインで受診から薬の受け取りまで完結する」という利便性を試みた施策ですが、思うように進んでいません。

マイナ保険証の普及や電子処方箋の利用など、医療DXを普及させるために、体制整備が施設基準として含まれています。

参考サイト:「厚生労働省 電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/denshishohousen_taioushisetsu.html

もう1つ、要件の中で注目したいのが(9)「医療DXの体制に関する事項及び活用して調剤を行うこと等について、原則ウェブサイトへの掲載」を行うという項目です。
今までは薬局内の掲示のみでしたが、今回からは薬局のホームページ等、ウェブサイト上へ原則掲載しなければいけません。

急速なデジタル化など、時代の変化に適応できない薬局は淘汰されていきます。
薬局経営を存続させるために、医療DXの取り組みは不可欠です。

医療DX導入によるメリットとは?

薬局経営で医療DXを導入するメリットはいくつかありますが、今回は「医療DX推進体制整備加算」の要件であるマイナ保険証と電子処方箋に絞って、それぞれのメリットを3点ずつ見ていきましょう。

マイナ保険証導入のメリット3選!

マイナ保険証とは、マイナンバーカードと保険証を一体化させたものです。
医療機関や薬局のカードリーダーにかざすことで、保険証として使用できます。

保険証情報が正しく取得できる

参考サイト:厚生労働省 マイナンバーカードの保険証利用についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000577618.pdf

マイナンバーカードからデータとして保険証を取得でき、保険証情報の手入力の手間が省けます
また、手入力による人的ミスを減らし、レセプト返戻の削減にも繋がります。

診療情報や薬剤情報等、正確な情報を取得できる!

参考サイト:厚生労働省 マイナンバーカードの保険証利用についてhttps://www.mhlw.go.jp/content/10200000/000577618.pdf

薬局のレセコンでは、実際に受診日、医療機関名、診察内容などを確認できます。
他職種間で円滑に情報を共有し、治療経過や併用薬チェックを行うことが可能です。結果として、質の高い医療の提供に繋がります。
また、非常時に薬剤情報が確認できるため、災害時にも役立ちます。

「医療情報取得加算」、「医療DX推進体制整備加算」が算定可能!

マイナ保険証を活用すると、「医療情報取得加算」と「医療DX推進体制整備加算」が算定可能となります。

「医療情報取得加算」は、6ヶ月に1度の算定のため注意が必要です。
「医療DX推進体制整備加算」は、1ヶ月に1度算定が可能です。

なお、どちらの加算も施設基準のなかに「ウェブサイトに掲載していること」の記載があります。
今後、薬局ホームページなどのウェブサイトの定期的な整備は必須だと言えるでしょう。

参考サイト:厚生労働省 令和6年度新章報酬改定の概要【調剤】
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001238903.pdf

電子処方箋の導入メリット3選!

政府は電子処方箋運用に向けて、医療機関や薬局への対応を促しています。
電子処方箋の普及率を上げるため医療報酬加算や、各種補助金制度を活用する方針です。

薬局が電子処方箋を受け付ける体制を導入することで得られるメリットを、3つ紹介します。

処方箋入力作業が大幅に効率化できる

参考サイト:厚生労働省 オンライン資格確認の次は電子処方箋! 〜いま、進めよう!〜https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001219786.pdf

電子処方箋を受け付ける場合、電子処方箋管理サービスから直接レセコンに取り込むことができます。
薬局で処方箋を入力する手間がなくなり、時間の短縮や、人的な入力ミスの削減に繋がります。

また、統一フォーマットでの様式となるため、正確な情報伝達や疑義照会件数の削減も期待できます。

全国の病院、クリニックから処方箋を応需可能

以前から薬局を利用している患者さんや、薬局の近隣に住む方がオンライン診療を受けた場合、電子処方箋に対応可能であれば、来局されることもあるでしょう。

新規顧客の獲得に繋がるだけでなく、他の医療機関の処方箋対応や在宅介入のきっかけにもなります。
また、以前から利用していた患者さんの離脱リスクも軽減できます。

オンライン服薬指導と連携することで遠方の方への医療が提供可能

参考サイト:日本薬剤師会 オンライン服薬指導について 〜制度と実務〜https://www.nichiyaku.or.jp/assets/uploads/pharmacy-info/onlinemedicationinstruction/20230607-04.pdf

薬局のDXとしてオンライン服薬指導もあります。
DX体制が整った医療機関や薬局が揃えば、診療から服薬指導、薬の配達まで患者さんの自宅で完結します。

患者さんにとっては診療時間の柔軟性や、通院が困難な方への負担軽減につながります。
薬局は立地に関係なく、全国の患者さんを受付できる大きなメリットがあります。

参考サイト:東和薬品株式会社 令和6年度診療報酬改定 【改定の概要】調剤https://med.towayakuhin.co.jp/cms_assets/admininfo_rev_info/admininfo_rev_info-pdf-196.pdf

また、オンライン服薬指導は令和6年度調剤報酬改定で変更があった「連携強化加算」でも必須事項となりました。
オンライン服薬指導を導入するための最初のステップとして、薬局ホームページの作成がお勧めです。

薬局の魅力を伝えるにはホームページ!

ウェブサイトを通じて店舗の雰囲気やサービス内容を伝えることができるため、薬局のホームページ作成は必須です。
飲食店や宿泊先などを選ぶ際にはウェブサイトや口コミを確認するのと同様に、薬局もウェブサイトで選ばれる時代になりつつあります。

薬局がホームページを活用する具体的なメリットを2つに分けて解説します。

信頼性と情報提供の拠点

ホームページは、薬局の印象を伝え、必要な情報を提供できます。結果的に、薬局の信頼性も高まります。
薬局がホームページに掲載するコンテンツとしては以下の項目があります。

  • 店舗情報(営業日、営業時間、アクセス方法など)
  • 薬局内外の写真
  • 力を入れている取り組み、サービス
  • スタッフ紹介(写真や日誌など)
  • 採用情報
  • お問合せや各種SNS(LINE、Instagramなど)

薬局やスタッフの雰囲気、在宅訪問などの力を入れている内容を全国に発信でき、オンライン服薬指導の案内も可能です。

お店の雰囲気が分からないと、訪れるのに不安を感じませんか?
ホームページがあれば、写真や情報を通じてお店の印象を伝えることができ、利用者の信頼度を高め、訪れるきっかけになります。

集客力と採用活動の強化

参考サイト:厚生労働省 患者のための薬局ビジョン 概要
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/gaiyou_1.pdf

地域の方に利用してもらうためには、まず知ってもらうことが重要です。
薬局がホームページをもつことで、地域検索で見つけてもらいやすくなります。

例えば、「△△市 薬局」、「〇〇市 在宅訪問」などのキーワードで検索する際、ウェブサイトが上位に表示されれば薬局の存在を知ってくれるきっかけとなります。
最近ではスタッフ日誌を掲載し、親近感、信頼感を得て集客につなげている薬局もあります。

また、人材紹介エージェントを利用すると高額な仲介手数料がかかりますが、薬局のウェブサイトを活用した求人なら仲介手数料は不要なため、人材獲得の経費削減が可能です。
さらに、薬局の雰囲気や取り組みに共感した人材が応募してくるため、一緒に働きやすい環境を築きやすくなります。

このように、薬局がホームページを持つことで、患者さんに必要な情報を提供できるだけでなく、集客アップや経費削減にも繋がるメリットがあります。

「薬局経営におけるDXの重要性」 まとめ

令和6年度6月からの「医療DX推進体制整備加算」導入により、薬局はマイナ保険証や電子処方箋などの医療DX体制整備が不可欠となりました。DX体制整備が進むと、効率的で正確な情報共有が可能となり、人的エラーの減少が期待されます。

医療DXの一部である、薬局ホームページを活用することで薬局の信頼度を高め、サービス内容など患者さまに寄り添った情報提供が可能です。また、新規顧客獲得だけでなく、人材獲得において経費削減も期待できます。